メニューが気になる▼撮影=04/18/07 誰もやきもきはしないだろうから、「目的地」に着く前に、もう一本カリフォルニアの写真を。
 ここは、無料の食堂である。そう、タダだ。こわごわ入り口から覗いてみたが、昼間から結構な賑わいだった。勿論、誰が入っても差別されることはない、ハズだ。ここで勇気を持っては入れたら、良いレポーターになるのだが、そこまではちょっと…。実際その時はけっこう空腹だったのだが、外から様子を垣間見るにとどめた。
 ここがホームレスや貧困者の為であることは言うまでもないが、車で乗り付けている人も目撃。アメリカでは車の車庫証明は必要ない(都市部ではガレージがなく、路上駐車している車も多い)ので、車に家財道具を積んで暮らしている人は非常に多い。キャンピングカー? いや、カローラなどの安いセダンが多い。日本ではリヤカーになるのだが、流石はアメリカだ。何が流石かわからんが。
 こういう施設は、だいたいNGOとか宗教団体が経営している。ここは宗教系の慈善団体のようだ。以前にもホームレスには申請により日当が支払われると書いたが、この国では、最貧層のセーフティーネットは充実している。ホームレスにないのは家だけで、あとは全てある。
 食事はこういう無料食堂に行くか、やはり教会などで食料をもらうことで賄える。申請により、フードスタンプという、食料品だけを買える金券ももらえるのだ。医療費は、無保険者の救急医療は無料(受け入れ先に断られることもあるが)なので、行き倒れることも難しい。
 その割を食らうのが中産階級というか、ふつーの人々だ。
 ハリケーン・カトリーナのあと、リタという別のハリケーンがテキサス・ヒューストンを襲ったことを覚えている人はもう少ないだろう。車を持っている人は、車で逃げたが、皆同じ方向に逃げなければならなかったので、車は大渋滞。車の中で2人が死んだ。ところが、この車に乗っている人たちの税金を使って、ホームレスなど車のない人は、軍のヘリコプターで、いち早く安全なところに運ばれたのだった。
 なんか変だ。
 中産階級なんかよりも、貧困者のほうがはるかにオトクなのだ。この国は。
 ローマ帝国末期、下層市民は奴隷の稼ぎ出す金で、無料の食事と見世物を楽しんだ。そして帝国は異民族の侵入で滅びた。
 アメリカ帝国は、中産市民という名の「奴隷」(working poor)の税金で、ホームレスに無料の食事を提供している。見世物はアメリカの場合、「××フェスティバル」とか「ファーマーズ・マーケット」いうようなものがあちこちにあり、あえて設定する必要もない。そして不法入国する異民族は後を立たない。
 しかし、アメリカは決してローマ化しないと思う。
 その理由は、傭兵に頼らず自分の軍隊を持っていること。そして、中産階級の多くは、楽をしている下を見ず、少しでも上層部に上がろうと、常に上を向いて暮らしているからだ。
 落ちることよりもはるかに難しい上昇を考えている人が山のようにいる。その精神を建国以来伝統的に継承できていることだけは、おかしなことが多いこの国なのだが、何も反論することなく尊敬できる。