昔の光いまいづこ▼撮影=12/10/07 祇園精舎の鐘の声…(中略)…盛者必衰の理をあらわす。このタワーは勿論平氏の誰かの墓ではない。そもそも墓ではない。タワーだ。
 そうまさしく、あのタワーレコード発祥の地、の跡。ロサンゼルスでも、ニューヨークでもない、サクラメントにそれはあった。日本では別会社なので、タワーレコードはまだ存在していると聞いた。だから日本の読者には、別段感慨もないかも知れないが、一時代を築いた企業の残骸を観るのは、やはりもの悲しい。
 タワーレコードはネットに負けた。
 言い換えれば、「在庫」に負けたのだ。
 店舗を構えれば、必然的に在庫を抱える必要がある。一方現代社会は、個人の興味の多様化、細分化により、非常に多種類のCD、DVDが存在するようになった。ネット上の無店舗販売ならば、その在庫を抱える必要はないが、店舗がある場合にはそうはいかない。ましてや、タワーレコードともなればそうではないか。
 大阪に住んでいた一時期、某(関西では有名)出版社に籍を置いていたことがある。その時、新譜案内に紹介されていて、偶々気に入って買った Jennifer Holiday のデビューアルバム。初めてゴスペルを聴き、その歌声に魅せられた。そこから他の歌手へと手を伸ばすことにならなかったのが、中途半端な自分らしいと思うのだが、彼女のレコード、そしてCDはその後も見つけたら買っていた。Jennifer Holidayは1982年には"Dream Girls"でトニー賞を受賞するほどの実力派だったが、日本では人気歌手でも有名でもなかった彼女アルバムは、近所のレンタルレコード店(古いなぁ)にはなかったからだ。
 でもその後タワーレコードが誕生して状況は一変した。そこに行けば彼女の名前でちゃんと検索できた。尤も、彼女はそんなにじゃんじゃんアルバムを出す人ではなかったので、たいていは空振りだったが。
 話を戻すと、こういった特殊な好みの顧客の期待に応えるためには在庫が必要で、そして在庫は企業の首を絞める。そしてタワーレコードは、時代とともにその役割を終えたのだった。少なくともアメリカでは。
 i-podの普及がタワーレコードに引導を渡したのだろう。でも、在庫の地獄に気づくのが遅かったのは、タワーレコード自身の戦略ミスだ。それは、固形石けんにこだわって倒産した、ミツワ石けん…とはちょっと違うな。でも、時代の流れを読めなかった、という点では同じこと。
 航空機時代にうすうす気づきながらも、空軍を創設せず、大艦巨砲主義にこだわり続けた大日本帝国の失敗から学ばなかったのは、日本だけではなかったようだ?