9.11のときのNY市長▼撮影=03/25/09 「モチベーション・セミナー」というのに参加した。ラジオのCMでやっていたので、面白そうだと思っていたのだが、偶々義兄も興味があったらしく、誘われたので、2家族4人で参加することにした。実は、一人が参加しても、家族単位4人で参加しても、料金は同じ。これは、オフィス単位で、例えば20人で参加しても同じだというから驚きだ。料金は19ドルだったっけ、忘れた。
 筆者のリスニングはかなり怪しい。にもかかわらず、何人ものレクチャーばかりというこんなイベントに、何で興味があったかというと、それは、コーリン・パウエルとルドルフ・ジュリアーニという、超有名人が来るというからだ。サーカスの象を見に行くのと同じ感覚だな。
 で、場所は某体育館。たぶん2万人近く入ると思うのだが、以前に同じようなセミナーに行ったことがある義兄の話によると、簡単に満員になるらしい。それで、開場の1時間前に行ったら、すでに長蛇の列。それでも何とか、一般席の最前列に陣取ることができた。実際、入りきれない人は、別会場で衛星中継を見たのだそうだ。
 このセミナーは、文字通り、「モチベーション」を高めるために、そういう有名人の成功例や失敗例を聞くというものなのだが、パウエルとジュリアーニを呼ぶだけでも、結構な金がかかるだろうに、ひとり19ドル、しかも団体割引アリで元が取れるのかと、しなくてもよい心配をしてしまったではないか。
7つの金を持つ男 トップバッターは、オリンピックで金メダルを7つ(だったっけ?)取った、マイコー・フェルプス。彼はしゃべるプロではないから、司会者がインタビューするという形式だったけど、それなりに面白かった。
 不動産で成功した青年実業家の話の後で、不動産セミナー参加者の募集が。
 そうか、これが目的だったのだ。
 銭儲けのモチベーションが上がったところで、モチベーションは突然不動産に変身。こういう会社がスポンサーなんだな、きっと。1000ドル単位の受講料が必要だが、モチベーションが(というよりも欲望が)最高潮に達してるから、「今日は申込金は要りません。クレジットカードでの申し込みが可能です」と言われた日にゃー、みんな列を成して申し込む。おまけに、「申込用紙を記入された方は、昼食をプレゼントします」とくりゃーうちの家族も申し込んでしまった。
 さて、パウエルの話は午前中だったから、まだその時は頭に入ったが、ジュリアーニは昼食後だったモンで、うとうとしてしまったじゃないか。
モチベーションのプロ・ズィグラー翁 メインスピーカーの一人は、ズィグ・ズィグラーという老人。この人は、「モチベーター」と言って、人にモチベーションを与えることを、長年業としてきたという。ちょっとボケてきてるということで、娘に付き添われての登壇だったが、それでも2万人の聴衆を前に、冗談を交えながら、大いにモチベーションを振りまいた。彼の原点は聖書だそうだ。実際、この主催者も、聖書の教えに基づいて、このセミナーをやっていると語った。
 まさに、プロテスタンティズムだ。プロテスタントが新教たるゆえんは、金儲けを罪としなくなったことでもあるのだ。
 その日のメモは今手元にないのだが、パウエルの話にでてきた面白いエピソードを紹介しよう。
花火と共に登場 国務長官をしていたパウエルには、いつも、当然のことながら護衛が付きまとう。まぁ、ブッシュのあと、米国史上初の黒人大統領になるのはこの人だと言われていた頃のことだから、暗殺を警戒して、かなり物々しく、SPがついていったことだろう。ある日彼は、屋台のホットドッグを食べたくなった。それで、とある屋台に行ったところ、その店主(ヒスパニック)が、SPと国務長官の姿を見て、慌てふためいた。「俺は不法移民じゃない。ほら、グリーンカード(永住権証)を持ってるんだ」と叫んだ。パウエルは笑いながら、「逮捕に来たんじゃない。ホットドッグを食いたいだけだよ」、と言うと、店主は安堵の表情で、パウエルに商品を渡した。代金を支払おうとすると、この店主は、「これはお返しだよ。アメリカは俺に、この国に住むというプレゼントをくれたじゃないか。」と言ったそうな。
 これらの有名人が、たぶんそんなに高くないギャラでドサ廻りをするのは、そうすることが、税金対策になったり、善意を施しているという名誉になったりするからでもある。しかし、ズィグラーに限らず、いい年の人たちが、この国の将来のためにということで、一肌脱いでいる側面も勿論ある。
 アメリカにもいろいろと問題はある(昨今の日本ほど、低レベルの問題ではないけど)が、人々に自由を与えるという点では、きっと今も、どこに国にも負けないだろう。自由を与えられた人が堕落しないためにも、モチベーションは大事だし、各界で成功した人には、それを伝授する役目がある。それこそ現代民主社会におけるノブレス・オブリージュなのだ。